時代の流れ、近代社会の発展は、需要と供給のバランス
を大きく変えて行く。それは、安価な大量生産品が、匠の技、
伝統産業の衰退に拍車をかけて行くように思えてならな
い。例えば生け花の花材をみても、一本一本に個性が、味
があるものがどんどん少なくなっている。何故なら手間隙
かけて育て上げた素材の良さに見合う収入に繋がらない、
それは特別な一本を求める人の減少だと云う。価値を理解
しての需要があれば、仕事人としてはどこまでも拘ったも
のを作り続けたいと思っているが、価値に見合う評価に繋
がらず、プライドをかけた仕事が認めてもらえないなら、
生活を考えても作る価値がない…と。そんな話の途中、カー
ド決済で、お祝儀袋が不要?袋の準備も要らず簡単で便利
な確かな入金だという話が。顔を見ないで、操作画面での
やり取り…古い時代の私には、お祝いや感謝等の相互の思
いはどうなんだろう…と思ってしまうと同時に、お祝儀袋
に飾られる様々な水引を結ぶ技術、水引や和紙の生産…い
わゆる匠と呼ばれる技術、日本独自の伝統文化、産業の今
後を思うと、価値観の崩壊?の前に大切なものを守って行
く難しさを思い知らされると同時に、言葉になら無い喪失
感を…。
「喜怒哀楽」、人の感情は四文字に凝縮して表されるが、
実際の感情は、そこに個性、感性、年齢、現状…多種多様
な要因が加わり、その域は計り知れず無限と云えよう。そ
う、同じ事象への反応も、受け止める人それぞれに異なる
のは不思議なことではない。
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今年も新たな年を迎える心の準備?締めくくりの時を迎
えた。振り返るこの一年、これまで以上に苦楽の振り幅激
しい一年を、私達は無意識の内に共有した事にならないだ
ろうか。誰もが日々を積み重ねる中で様々な出来事に、そ
れぞれの思いで向き合ってきた。身近な出来事だけでなく、
日本、世界…メディアの発達が様々な現実を目の当たりに
させてくれる。度重なる、かつて経験したことの無い…、
命を守るための行動を…が繰り返された自然災害の、言葉
になら無い程の余りの酷さ、平成から令和への代替わり、
ラグビー開催がもたらした「ワンチーム」の言葉に見られ
る繋がりの大切さや互いを認め称え会う心、参加国への
様々な地域でのおもてなし対応、ノーベル賞、一喜一憂し
た様々なスポーツ…。
私達はそれぞれの出来事を現実に、時にはそれが情報だ
としても、その一つ一つを真剣に受け止め、良いことも悪
いことも、今後どうすべきかを自身の問題として、先延ば
しにせず、考えるべき時代に生きていると云う現実を、再
認識すべきではないだろうか。同じものを目に耳にしなが
ら、時に感情移入、集団心理をもとに、確かに経験した者
には及ばないが、その喜怒哀楽を共有することから多くの
事を学び、未来への備えや対策を、時には自分自身の将来
への夢や目標へ、また、現状では諦めかけていた自身を鼓
舞して…と、この時期だからこそ、新たな年へ向けて改め
て自分自身と向き合い、目標を掲げるのも良いのかも。野
生の象やライオン、大きい蛙などと一緒にアフリカの大自
然の中で暮らし、育んだ女性「TIPPI」の並外れた絆が話
題になってるのも、この時代だからこその深い意味を放っ
ている。
華道専慶流 西阪慶眞
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