2007年8月1日発行/専慶流いけばな真樹会主宰・西阪慶眞
いけばな専慶流・ホオズキ

●花材/ほおずき、ストレチヤの葉、アンスリューム、孔雀草

●花器/直上コンポート花器

●ホオズキ 京都では8月に入ると店頭を飾るホオズキですが、浅草の浅草寺では例年7月9日、10日開催のホオズキ市が有名。自然栽培では赤く色づくのは8月末〜9月なので柑橘類の着色と同様、ホルモン剤を散布した促成ものが出回ります。
 それにしても沢山の実が綺麗に付いた商品を見ると、さすが農家の努力と感心しますよね。実際に栽培すると葉は虫に食われ、なかなか実は付かないものです。

ポイント 
 少し茎の曲がったものを天に選びます。見せどころは赤い実ですので、実が上部に付いている素材を入手します。

水揚げ すべて水切りで十分です。ホオズキの茎は腐りやすいので、2〜3日に一度は切り戻しをします。

いけばな専慶流・ほおずき-2
現代花」ではホオズキは実だけにして使用。
(写真をクリックすると解説ページにリンク)

●花材/ひまわり

●花器/創作三角花器

ポイント 
 ヒマワリ一種の小品花です。葉はすべて取り、花弁と花芯をアップ視しています。中央部のマッス扱いした所から一本左に飛び出させ、意表をついた力強さを表現しています。

 こうした扱いでは、花器の形が重要な要素となります。

水揚げ 水切り。

いけばな専慶流・ひまわり

いけばな専慶流・キリンソウ伊吹山にて(キリンソウ)

セレンディピティ

 京都に思いをよせる人は、庭付き木造住宅に憧れる人が少なくない。縁側からとび込む四季折々の緑、優しい風が全身を覆う、ゆったりとした時間の流れを期待するのであろう。 
 夏ともなれば、街のあちらこちらで打ち水をする光景が見られ、なんともいえない情緒をかもし出す。モッコク(木斛)が咲き始めると軒下にはスダレ(簾)を掛け、室内の建て具も葦戸(よしど)に交換、涼風を取り込む。7月は祇園祭、8月は大文字、古都ならではの大きなイベントが後押しする。
 こうした快適空間の背後では、当然の事ながら日々の文化的管理を受け継ぎ、住人と家が一体となることで、一層の豊かな暮らしに結びつけている点が「京屋」の良さなのだろう。様々なうるおいをもたらしてくれる庭も、その裏側にある植物との付き合い方は、まさに子育て同様で、日々の世話が楚々とした姿、空間を維持している。植木の成長は想像以上に早く、あっと云う間に生茂る。青さが魅力の杉苔は、夏場の水やりを怠ると一気に緑を失う。白河砂の間からも雑草は容赦なく顔を出すため、草引きは欠かせない。華やかなツツジの花が終わればすぐに花柄摘みが待っている。咲いたばかりの一輪の花を手折って花瓶に挿したり…、向き合う母の動きに無駄がない。
 京都植物園を訪ねた。広大な苑にもかかわらず手入れが行き届いており、雑草は目につかない。多くのボランティアの手で守られていると聞くが、家庭の庭とのスケールは桁違い。よほどこまめに目を光らせているのだろう、その美しさに感心する。雑草の成長は早く、タネの数も多い。繁殖はタネだけでなく、地上を這って増殖するものもあり、日々の門履(かどはき)同様、手が抜けない。
 秋には落葉がハラハラと舞い落ちる。先人達はその様を優雅、移ろいと捉え、掃き清めるその時間にも人間的な豊かな心を彷佛とさせた。しかし、草引きは面倒、落葉は迷惑と物理的に捉える世代への交代が、折角の庭を壊し、土をセメンで覆い被せたり、レンガを敷き詰め…。
 室町界隈は呉服問屋などで栄えた街。蔵付きの大きな屋敷が軒を並べ、立派な日本庭園が美意識の高さを物語っていた。しかし、今ではその大半が取り壊されコンクリートの箱に。数百年の樹木に秘められた人々の念いとの交換が無味乾燥な箱ものへ…。これを経済格差の暴走と云えば言い過ぎだろうか。
 とは云っても、京都には古き良き日本文化の土壌はまだまだ各所に残され、有形、無形の心の形が息づいている。文化庁の提唱する「文化力」、今こそ現実味ある実力を発揮してもらいたいもの。とくに、若者には暮らしの中に生きてきた文化の深さ、尊さを実生活を通じ、まず肌で感じてもらいたい。
 セレンディピティと云う造語が注目されている。平たく云えば偶然に見つける、発見する「能力」と訳されている。即興いけばな、現代花はまさにセレンディピティであり、日本人には強い能力分野。触れて、身体に受け止めた後にこの能力を発揮、伝統に裏打ちされた新しい「かたち」「こころ」を創造してもらいたいと期待が膨らむ。

            華道専慶流 西阪慶眞


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