2007年5月1日発行/専慶流いけばな真樹会主宰・西阪慶眞
いけばな専慶流・フトイ

●花材/九十九、プロティア、グリーンカラー、ブルーファンタジー、鳴子ユリ

●花器/慶眞デザインコンポート

●プロティア アフリカ原産だが、切り花はオーストラリアから入っている。種類は多く、キングプロティア、リューカデンドロンなど。輸入の際の消毒のためか、葉の水揚げは悪く、早くに茶色く変色する。また、花も日持ちしない場合が多い。

ポイント 
 「九十九(つくも)」は5月を代表する水物素材の一つ。直線の美しさと水辺の清楚さが伝わり、心穏やかにさせてくれる。
 九十九はわずかな曲をつけ、線条美を見せ、プロティアで引き締めるが、ブルーファンタジーをうまく溶け込ませ、一体感を持たせる事が大切。

水揚げ 水切り。

●花材/大手まり、クレマチス

●花器/一輪挿し

ポイント 
 花店にはあまり並ばない大手まりだが、水揚げも良く、紫陽花とは異なった趣がある。花は蕾のグリーンから純白に移行し、軽い手まりの様相を示す。水揚げの関係で撓めは極力避けたい。ここではさりげなくクレマチスを配材に調和させた。

右作例はすべて我が家の庭で採取した花材。

水揚げ クレマチスは根を割る。大手まりは水切り。

いけばな専慶流・大手まり

いけばな専慶流

ナマ花に馳せる思い

 ペーパー、リボン、シルク、セル…と言った素材で造られた花、そして、ドライフラワー、ブリザーブドフラワー…と言った長期保存可能に加工された花など、一口に「花」と言っても、ナマ花以外にも身の回りには様々なかたちの花があり、飾られている。元を正せば、花のある暮らしを求め続けて来た結果に違いない。
 幸いにも四季に恵まれた私達は、四季の自然が生み出す一本の花、草木の時々の姿にふれ、心を移し、癒され、感動する…と言う環境の中で文化、美学を積み重ねて来た特別民族。日々の花空間、自然空間に学び、共に歩んできた民族は世界広しといえど我が国以外ない。
 旅に出ると、自然の植物は言うまでもなく、店先に何気なく飾られた花や宿に飾られた花が目につく。生き生きとした生花が迎えてくれると、そこにその花を生けた人の思い、花への思いやりが感じられ、なんだか嬉しくなるものです。最近は、一瞬生花かと思う程の造花に出会う事があるが、やはり生花の美しさには叶わない。「さすがに京だね。行く先々に造花ではなく生花が飾られていて、やっぱり良いね。本物は良いよ…」と言う旅の若者の会話を耳にした。一輪飾られている花にも興味を持ち、店の人に話掛けてくる人も結構居るらしい。花に関わり京に生きる者として、なんだかホッと心緩んだ。最近、滋賀県の信楽に出掛けた際、昼食に立ち寄った料理旅館。小さな庭を入ると水鉢に二輪の椿が、そして玄関に入ると信楽焼の壷に季の花、壁掛けには淡いピンクのイカリソウ、磨かれた廊下脇には新緑を主体にした花…トイレ、客室、あらゆる空間で中小の手入れされた花が迎えてくれた。同伴した仲間全員が口を揃えて”綺麗”と感嘆。店主の心遣い、感性は自ずと料理にも心踊ったひとときであった。
 先日ある人気芸術家の個展に出掛けたが、会場入り口に作家宛に届けられた祝い花。長い会期中、作家の来場サイン会に合わせ届けられた花であったのだろうが、水が下がり、花は枯れ、哀れな姿の花が平気で置かれていた。おそらく水が切れたのが原因のようだが、最近こうした状況を花展会場でさえ眼にする。いけばな人としては恥ずかしいかぎりである。たしかにナマの花を飾れば日々目が離せず、少し元気が落ちれば水切りをしたり、葉を取ったり、熱い眼差しは終始つきまとう。植物も家畜を可愛がるのと同じ、愛情なくして輝かない事を日々実感する。しかし、心ない若干の人達には動物と花はどこか捉え方が異なり、安易に扱う人が見受けられる。枯れればまた買えばいいとでも考えるのだろうか。教室においても粗末に扱う生徒を見受ける。生ける事に没頭するあまりに「生きている」事がおろそかになるのであろう。撓めて折る人は大抵の場合、自己中心な人なのではないだろうか。さらには、生けてしまえば枯れていても気にならない…なんとも心淋しいいけ手の心を垣間見るようだ。
 話しは変わるが、枝垂れ桜に異変が起こっている。何が異変? 通常の桜には今のところ顕著な現象は起きていないのだが、枝垂れに限り、頂上枝に花が付かない、着いてもまばらなのである。原因はまだ解明されていないが主因は温暖化との指摘が多数あがっている。豊かな四季の花を誇る日本の景観にも気候変動は少しづつではあるが影響を与えている事は確かであり、私達の心のあり方と共に、精査、善処したいものです。

            華道専慶流 西阪慶眞


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