2003年3月1日発行/専慶流いけばな真樹会主宰・西阪慶眞      


花材/もくれん、彼岸桜、チューリップ

ポイント モクレンは手を広げたように枝を出す。その個性を捉えて横枝を上部で交差させ、桜の集合と対比させて春の力強さ、歓びをねらっている。若い素材は幹に味わいはなく、さらに真っ直ぐで面白みがないため花に焦点をあわせた扱いをする。

ひねた素材は風情を生かせて自然調にするのもいい。




花材/ボケ二種、チューリップ、タマシダ

ポイント 自由奔放に横枝を出すボケは、その荒々しい表情を捉えて交錯する空間美を求めます。二色を混ぜていける場合は花が小さいため混在させるのではなく、分離させ、花色にメリハリをつけるといいでしょう。

葉ものを配して全体の引き締め役としますが、軽快な扱いでバランスをはかります。タマシダは茎が細いので挿しにくいものだが、根元で引っかけるようにして留めます。どうしても留まらないときは添え木するのもいいでしょう。


笑顔にも本音と建て前

 
 彌勒菩薩像(みろくぼさつぞう)やマリア像がたたえるその清らかな慈しみ深い、優しい笑顔、それは分け隔てなく全ての人々に向けられた微笑みであり、私達の心を魅了する。
 テレビCMで流れているアイフルのコマシャール、ペットショップの前で可愛い子犬をせがむ娘とそれを拒否する父親像を描いたワンショットである。娘の要望を無視し、立ち去ろうとしたそのとき、子犬の目と目が合ったのをきっかけに父親の足は釘付け。それというのも父親を見る愛くるしい「ロングコート・チワワ」の表情、ワンワン鳴くのではなく、静かに見つめるその姿は格別で、父親の心を揺り動かす無言のやり取りが短い映像の中に微妙に映し出される。
 この数秒の映像を撮るのに数日かけた父親役 清水章吾氏の苦労話や、放映後、この犬(くうー)の人気が急増するなど、ホットな話題を投げかけている。
 もう一つ、偶然に乗り合わせたローカル電車内での事。
 特別目立つような服装をしている訳でもなければ、失礼だがいわゆる世に言う美人、美形でもないごく普通の親子が乗り合わせていた。まだ一歳に満たない意味の通じない片言の言葉しか発しない位の幼児の何気ない笑顔との出会いである。そのなんともいえない笑みに私を含む周囲に居た誰もが快い反応を示し、思わず、無意識に微笑んでいる…と言うのが一番正しい情景描写かも知れない。人に語り掛けてくる訳でもなく、当然人の気を引こうして笑顔を振りまいている訳でもない。その親子の笑顔が素直で、計算も欲も何も無い純粋な微笑みだからこそ、その場に居合わせたあらゆる人の心までをも開き、同化させ、穏やかにさせ、優しい笑顔を引きだしてくれたのであろう。
 天使の微笑みと云う言葉がピッタリあてはまる親子の姿、学ぶべき点をあらためて見せつけられた一瞬でもあった。
 「最近あなたは、心から笑っていますか?」と問われると、ギクッとくるほど平常心を失っていることに気付く。その場を取り繕うためや、社交辞令、建前上に作り笑いをしていることのなんと多いことか。そんなことでは年々増える顔の皺は益々見にくくなる。心からの笑顔は多くの言葉以上に心を語り、様々な人の笑顔へと波及、人と人を繋いでその場の空気を和ませる。
 向かい合う花も同じ。計算ではなく、いける人がまず素直になることが第一。作り笑いのいけばなではなく、花と優しく語り合い、いけ手と花の融合。そこにこそ本来の生ける喜び、愉しみがあり自分の花が存在するのです。

                                  華道専慶流 西阪慶眞


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