2003年1月1日発行/専慶流いけばな真樹会主宰・西阪慶眞      


花材/三光松、ユーホルビア、アネモネ

ポイント 作例の松は黒松を盆栽風仕立てと同じ要領で栽培したもの。数年前までは関西ものが優れていたが今では空気の悪化にともない静岡産がクローズアップされている。茎の曲は成長過程で人工的に造られたもの。生けるポイントはその曲線を生かせ、空間美をねらい、マッスになった松葉の大小配置に配慮し、バランスをはかります。左前に配した松はかなり傾斜させているため、このままでは器もろとも倒れる危険性があり、後ろにも必ず配し安定をはかります。ユーホルビアは小花の美しさを際だたせるように松と逆方向に添えて対比効果をねらい、アネモネで引き締めます


ポイント ちょっとした空間に遊び心で生けた作例。独楽をかたちどった花器とコットンフラワーを添え、新年の歓びを表現している。

このような小さないけばなでは余り素材で楽しめるので気軽に挑戦してほしい。独楽は実際のものでもよく、この他、小振りの羽子板、絵馬、水引など小道具として配すと面白い。

花材/松、デンファーレ、千両、コットンフラワー


(奈良県・春日神社) 

環境に生きる美学

 「新年」それは単なる時の流れの通過点にしか過ぎないが、1月は始まり、希望、夢、飛躍、反省、決意の心が働く。これから訪れるであろう希望を、少しでも手元に引き寄せ、もぎ取りたい気構えに、おのずと緊張が走る。
 今回は自然と人のかかわりは連鎖、循環が基本であることを考えてみたい。
 太陽の光を受けて緑色植物が光合成によって無機物から有機物を生み、動物が消費。これを植物連鎖と云い、更に消費に伴う残骸を微生物が分解する事により、再び無機物に戻して行く…これを生物学では物質循環と云うのだが、万物がうまくかみ合いながら消費、生産を繰り返し、生存する。動物は自分や家族が生きるための獲物は捕るが不必要な乱獲はしない。一見あたりまえの事象だが、この事が循環にはとても大切な条件であることを本能的に彼等は知っているのである。かつての日本の漁業や林業、農業もすべて循環を最優先した営みがなされ、理想環境を維持してきた。
 農家は必ず牛や馬、鶏を飼った。家の周囲には柿など実物も植え、田圃にはレンゲを咲かせ、とてものんびりした光景が広がった。一見のどかに見えるこの光景もすべて循環の摂理からくる「生活の知恵」。家畜の糞やレンゲ、野焼き、裏山の枝はらいや雑草の干し草は田畑に活力を与えるに欠かせない肥料として、また一方では害虫を必要以上に繁殖させない策だった(だからだろうか近くの野山は整然としていた)。
 藁葺き、茅葺屋根は家そのものが呼吸すると云われるように夏涼しく、冬温かく住人を快適に守る。竈(かまど)を家の中に置き、その煙で害虫を追い払い、さらにその煙は屋根の骨組みである竹や縄を一層強くする効果にもつながっていた。壁や土間も呼吸する天然素材(土、藁、竹など)を使っていたため、湿度の高い環境から身を守る役割を最大限に引き出していた。
 そんな生活の限りない知恵は心の豊かさにまでおよび、野の花をそっと手折り、室内に飾る。多忙な日々のなかで、美への探求心をも育んだのである。
 私達はこんな素晴らしい祖先と伝統の上に生きていながら、様々な工芸や建築その他伝承分野でも「後継者不在」という悲しい報道を聞くと心痛む思いをする。行政の厚い手がさしのべられるべきなのである。
 買い物に行くたびに思う。膨大に消費される発泡スチロール、プラスチック、塩化ビニール製の容器や袋。これらを焼却したりリサイクルするのにどれだけの施設と労力、資金が浪費されていることだろう。それだけでない、そこから発生する発ガン性物質を出すダイオキシン問題も解決しないまま、全世界を恐怖の網にかけ続けている。
 ここに来てホームセンターが活気づいている。手間賃の高騰、給料ダウンも影響して、ちょとした家の修理は自分の手でと云う人が多くなったからだ。蛍光灯管さえ替えられない人が、金槌やペンチを握る…これはいい傾向である。これらの作業のなかで今まで見失いがちなモノを大切にする心や、使い捨て時代の転機になれば好都合。
 幸い私達は日頃花材に接し植物の色や勢いを常に眺め、少しの変化にも敏感である。この繊細さは是非とも後世に伝えたいもの。

                                    華道専慶流 西阪慶眞


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