蓮をいける

華道専慶流・西阪慶眞


蓮の株分
蓮一種 株分生花 西阪慶眞作

蓮の生花
蓮一種生花 西阪慶眞作

   

POINT

いけばなの最も重要な要素は素材を大切に扱う事であることは云うまでもない、と同時に植物と一体になる優しい心は当然のこと。

しかし思うように生けられないからと、ついつい、いけ手本位の我がままが顔を出し、知らず知らずの内に素材をいじめていることが多い。いくら精一杯生けても肝心の素材がダウンしていては台無し。

蓮は扱いに繊細さを要求される極致と言ってよい。素材を手にする前に十分すぎるぐらい全体イメージを膨らませ、構図を描き、瞼に強く焼きつける。勿論いける素材を見ないと、詳細の配分は定まらないが、素材をあれこれ振り回す時間的余裕が皆無の蓮は、時間との勝負とも言え、瞬間的構成と深い愛情の証しの形であろう。

早朝観察した時の様々な感動、感情、ゆったり動く葉の表情など、その場の空気を彷佛させながら、いける爽やかな緊張感を楽しみたい。

蓮は古典花の代表格で下記約束事が詳細にわたり規定されている。しかし、それ以上に大切なのが素材を深く知り、会話する心であり、深い愛情の傾倒こそ作品の内容となりえるのです。今回ばかりは理屈ではなく優しい心そのものが作品となることを全身で体験下さい。

花と葉の規則

蓮の葉には「橦木葉」「巻葉」「握葉」「朽葉」「請葉」「真葉」「荷葉」「銭葉」「浮葉」などがあり、それぞれの生態、特徴を言い表している。

蓮の花には「開花」「蓮房」「つぼみ」がある。

●それぞれの葉や花の形態は三世の世界を象徴。

 「現在」→ 開花、真葉
 「過去」→ 蓮房、朽葉
 「未来」→ つぼみ、巻葉

●一花一葉を出生とし、花、つぼみの横には必ず巻葉を添える。

●花には紅と白がある。一瓶の中に二色を混ぜて生ける際は白花を上に。

●天には立葉(真葉)を配し、花又は蓮房をあてることはない。

●大水盤にいける際は池の雰囲気を演出して浮葉又は代りの水草類を取り合すこともある。

蓮の水揚

蓮は水揚げが生命。採取の段階ですでに適当な水揚げ処理をするのがポイント。その方法とは、採取後すぐに池水を注入するか、井戸水を注入する。注入には水圧をかけたホースや特殊水鉄砲を使う。また、扱いは常に逆さに持ち、切り口を上に向け、茎中の水を落とさないことがポイント。そのためには水中に浸けるまで常に切り口を指で蓋をするか、逆さにしていること。特にいける際、この行為、手順の遵守が大切。

その他水揚げ法には「酢酸塩溶水の注入」「ショウガ汁の注入」「焼き明礬と塩を混ぜたものを根元にすりこむ」などがある。しかし、早朝の採取、採取後の池水の注入、逆さに保持する、風に当てないようビニール等で全体をおおうなどを守れば完璧。巻葉、花には注入の必要はない。

花は3日間開閉を繰り返す。従って、上部の花は明日開花する蕾を選択。



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